chakousari’s blog

ペットシッター足掛け15年

ジンくんの五月人形

chakousari2006-04-24

享年18歳10ヶ月。寝たきりだった老犬ジンくんが旅立った。わたしの知る限り、一番の長寿ワンコだった。
飼い主さんはわたしの母と同じ年の女性で、去年の秋に動けなくなったジンくんをほとんど1人で、つきっきりで介護されていた。わたしは、長時間留守にしなければならない月1回の飼い主さんの通院のときに、おうちでジンくんに付き添うというお世話を半年間させていただいていたのだ。
動きたいときには支えて歩かせて、オムツを取り替えて、ウンチはおなかを押して絞り出してあげて、ごはんの後はお口の中を洗ってあげて等々、昼夜の区別のなくなったジンくんへの献身的な介護に頭の下がる思いだった。
最後のお世話となったつい先週、終わった後お茶を頂きながらこんなことを伺った。
ジンくんは保健所に持ち込まれたワンコだった。もうすぐおうちが建つから犬が欲しいね、とご家族で譲渡会に行ったという。可愛い子犬がコロコロと元気に動き回っていて、娘さんが「この子にする!」と決めたワンコは女の子だった。しかしパパが、ひとりうずくまって寝ているワンコを指して「いや、この子がいい」と決めたワンコがジンくんである。理由は男の子だったからだ。実はジンくん宅は娘さんが3人。パパは男ひとりだったからね、ジンくんはパパの味方のひとり息子として迎えられたのだった。
その年の5月5日、パパが高島屋に買い物に行くと言って出掛け、立派な五月人形を買って帰って来たそうだ。
「ジンのだよ」と、うれしそうに見せていたという。
そのパパはもう天国へ行ってしまっている。ジンくんの寝ているお部屋に優しく笑うパパの写真が飾ってあった。飼い主さんは「そういえばもう五月人形出さなくちゃねぇ、ジンちゃん」と言っていた。
訃報をうけて伺うと、五月人形とジンくんのお骨が床の間に飾ってあった。
「やる事はやったという感じで悲しくはないけど、いないのが淋しいわ」とおっしゃっていた。もうすぐ次女の方にお孫さんが誕生するという。ジンくんはご家族に愛されて、恩返しにおとうさんの分まで長生きしておかあさんを守って、こんどは安産の守神になったんだよね。合掌。